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2013年4月 2日 (火)

「エリュシオンTRPG」からみえるもの


*あらかじめお断りしておりますが、今回のエントリーで「PBW」「WTRPG」「ウェブトークRPG」などの名称が出てきますが、これは運営会社に因って呼称が違うだけのことですので、基本的にはプレイ・バイ・ウェブのことと読んで下さい。




過日の話ですが、「恋と冒険の学園TRPG エリュシオン」を買いました。
河嶋陶一朗先生のデザインと言うことで「サイコロ・フィクション」みたいなものになるのかな?と思っていましたが、予想を良い意味で大きく裏切られる出来でした。


このエリュシオンTRPGの母体となったウェブトークRPG「エリュシオン」を展開しているのは株式会社クラウドゲートなのですが、この会社、旧社名を株式会社テラネッツといいまして、さらにその母体は札幌の株式会社コスモエンジニアリングという、ゲームとは全く無関係の企業でして、そのコスモエンジニアリングから「退魔戦記」を始めとするASURAシステムのTRPGゲームを多数…他に「ASURAファンタジー」「FATMAN」「サイコマスターズ2065」「ギャラクティックアーク」「探偵物語」…発売したことが起源となっています。「退魔戦記」と「ASURAファンタジー」はテラネッツ時代にも発売されたことがあり、現在クラウドゲートのサイトでも簡単に触れられています。(え?デッドリンク?)



ちなみに、「退魔戦記」が発売された1992年前後、KIRAMEKI、PLAZMAといった、ともに北海道発祥のTRPG作品が発売されていたことがあります。私はKIRAMEKIの「ブレード&ワード」(とその改版の「アコースティックリーフ」)の大ファンで、当時コンベンションでGMしまくった覚えがあります。
このKIRAMEKIという会社も、「ブレード&ワード」付属のアンケート葉書では連絡先が岩見沢の秦新商事内というものでした。(一説にはパチンコ屋だとか?)キラメキはその後札幌に移転したことが確認されています。
ちなみに、当時キラメキに在籍されていた中村誠先生は、現在冒険企画局所属で、「サタスペボードゲーム 大大阪」などのデザインを担当されています。
4/28のゲームマーケットにも一般ブースで名前が出てますね。



「エリュシオンTRPG」は国産TRPGでは珍しい全ページフルカラーでありながら、他のB5サイズの作品と同じ価格帯であることが大きな話題ともなりましたが、特に「日本で初めて」と言う訳ではないのです。
翻訳物でしたらホビージャパンから発売されているD&Dの第3版と第4版がルールブックもサプリメントもフルカラーですし、(第3版の一部のシナリオやサプリメントには本文がモノクロのものもあります。日本オリジナルの製品も基本モノクロ)D&Dに慣れたゲーマーには珍しいものではなかったのです。(色使いはやはり日本の方がポップですね)
純国産TRPGルールブックという点でも、「エリュシオンTRPG」の9年前の2004年に、「無限のファンタジアTRPG」が全ページフルカラーで発売されており、両者とも同じB5版180ページ、値段も同じ3000円(税込みと税別の違いはありますが)、しかも出版社が同じ新紀元社と言うことで一部の注目をさらいました。ページレイアウトもよく似ていますし、巻末にPBWの案内も載っているところも一緒です!
この「全ページフルカラーで3000円」という売り文句は、今までのTRPGルールブックの常識を覆す大きなインパクトとなり、評判を呼びました。(表紙があまりにも媚びているという批判も一部でありました)



「無限のファンタジアTRPG」と「エリュシオンTRPG」が似通っているというのも、「エリュシオン」のクラウドゲートと「無限のファンタジア」のトミーウォーカーは、同じ札幌市発祥の企業であり、両者とも主業がプレイ・バイ・ウェブの展開であること、PBWのプレイヤーから収益を得る方法が両者とも良く似通っていること…などの特徴があるからです。
社史をたどれば、トミーウォーカーはテラネッツでPBWを運営していたスタッフが独立して起こした会社だと聞けば、事業形態が似通っているのも頷ける話ではあります。
しかし、PBWをTRPG作品に転用することはトミーウォーカーの方が積極的でして、「シルバーレイン」「エンドブレイカー!」「サイキックハーツ」ではTRPGメインの企業とタッグを組んでルールブックを発売しています。
あと、トミーウォーカーと言えば、コミケ開催日には国際展示場駅に展開中のPBWの広告を大体的に展開したり、「無限のファンタジア」の時はビッグサイトの近くでTRPGの体験プレイ会を挙行したりと、色々と攻勢をかけて成功している会社であると感じます。
トミーウォーカーは当時活動していた日本全国の大きなTRPGサークルに、「無限のファンタジアTRPG」ルールブックを1冊ずつ無料で送りつけたと言う話を聞いているのですが、本当なのでしょうか?
(コスモエンジニアリングも1990年代、当時のRPGマガジンに載っていたサークル情報から連絡先を吸い取って、メイルトークRPGの宣伝をコンベンションでしてくれという封筒を送りつけたマーケティングをやったことがあります。当時は東京近郊でコンベンション参加者の名簿が流出したとかで騒ぎになり、実際に遊演体ややのまんから身に覚えのないダイレクトメールが届いた友人もいました。)



まぁそんな過去はともかく、「エリュシオンTRPG」では冒険企画局とのコラボレーションを大体的に発表したり、ウェブトークRPGのオフラインイベント「どさいべ」で積極的に営業したり、(クラウドゲートはコスモエンジニアリング時代からオフラインイベントを全国各地で積極的に開催していて、プレイヤーの生の声を大切にしている姿勢を見せています)秋葉原のクラウドゲート本社で何回か体験会を開催したりなど、過去のTRPG作品をなかったことにする(ASURAシステムのデザイナーの冴島鋭士先生はとっくの昔に退社しています)営業姿勢には感心します。
その甲斐もあってか、「エリュシオンTRPG」ルールブックは好調な売れ行きを見せ、(現時点で第2刷)コンベンションでもよく遊ばれているシステムに挙げるプレイヤーも少なくないと聞きます。
私はまだ実際に遊んだことはないのですが、インターネット上の数々の記事を読む限りでは学園生活を謳歌しているプレイヤーが数多く見受けられるとのことですし、これから紙のリプレイも出版されるとのことなので、瞬間的なブームに終わらない長期的な盛り上がりが期待されるところではあります。(後述…)



ここで「無限のファンタジアTRPG」「シルバーレインRPG」「エリュシオンTRPG」がなぜ全ページフルカラーでありながら低価格なのか、という点について説明しなければならないと思います。
簡単に言えば、クラウドゲートとトミーウォーカーともに本業のPBWで大きな収益を上げており、その収益を活用して安価にフルカラーのルールブックを出版することができたからであります。
特に「無限のファンタジアTRPG」「シルバーレインRPG」では契約クリエイターの多数のイラストがルールブックにてんこ盛りで載っていて、ビジュアル面でも誌面を盛り上げることができたのも特徴です。
PBWの収益と言う大きなバックボーンが存在したからこそ、オールカラーで3000円という価格を実現できたことは特筆に値します。
TRPG開発を主業としている会社では、ルールブックの開発とリプレイの販売、そしてサプリメントの販売が主な収入源でありますが、TRPGとPBWでは市場規模の大きな差があることから、(昔より安くなったとはいえ)コストのかかるカラーページの製作は及び腰であることが多いのです。
PBWのようなマスプレイヤーゲームも、PBWの以前に存在したプレイ・バイ・メールの「蓬萊学園」「鋼鉄の虹」「クレギオン」などの著名な作品はありますが、こちらも専門の態勢を敷いてのことですので、TRPG専門の会社がかかわるのは、ゲーム雑誌の読者参加企画くらいです。(その読者参加企画からTRPG化、コンピューターゲーム化を果たした「ダブルムーン伝説」も懐かしい記憶です)
また、TRPG化に先行してPBWが展開されていたのは、PBWのプレイヤーがTRPGのルールブックを買うというメーカーの確信があってこそのことと言えます。
確固たる基盤を有した上で、「無限のファンタジアTRPG」と「エリュシオンTRPG」のような意欲的な作品を出したのは、TRPGゲーマー以上にPBWのゲーマーがルールブックを買うという「市場の拡大」を見越してのビジョンであり、結果それは正しかったのです。



また、「無限のファンタジアTRPG」「シルバーレインRPG」では、作成したキャラクターはそのままPBWでも使うことができることが謳われていました。
TRPGを買ったプレイヤーに、PBWの世界に足を踏み入れてもらうための負担を少しでも減らそうと配慮されていたのです。
一方、「サイキックハーツRPG」「エリュシオンTRPG」では、このことが考慮されておらず、前者ではPBWとTRPGでのプレイの相違に関する注意点もルールに書かれています。
TRPGはTRPGで独自の展開をしていく、という意思表示なのかも知れません。



しかしながら、ここでひとつの問題を指摘しなければなりません。
PBWから派生したTRPG作品は、本家のPBWの運営が終了してしまうと、TRPGの展開も終了してしまうと言うことなのです。
既に、「無限のファンタジア」「シルバーレイン」はPBWでの運営は終了し、TRPG作品としても今後の展開はない「死んだ」ゲームとなってしまっています。
現在運営中の「エンドブレイカー!」「サイキックハーツ」「エリュシオン」でも、この宿命は避けられません。
現在のPBWの運営が終了した後に、TRPGの展開も終わってしまうのか?それともTRPGはTRPGで展開を継続させるのか?今後が気になるところです。

先にも書きましたが、各所で「エリュシオンTRPG」は好評を得ています。
今後どのような方向に動いていくのか?
現時点ではwebと紙のリプレイ以外に動きはありませんが、これからが楽しみなところです。



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サークル情報です。
4/28のゲームマーケット2013春にサークル参加します。
場所は東京ビッグサイト西3ホール・一般ブース119です。
かねてから予告した通り、今回は新刊の発行を予定しています!
詳細はもう10日ほどお待ち下さい。
皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。



ひさしぶりにブログを書くのってなんか新鮮でした。

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