« コミケ落ちました | トップページ | ルールブックを買いました »

2006年11月11日 (土)

入門者への壁の高さ

 これを読んでいる皆さんは、TRPGの入門のための様々な知識、例えば用語などを、どのような媒体で知って、覚えたでしょうか?
ルールブックに用語集がありましたか?
リプレイで読んで覚えましたか?
それとも、まず遊んでみて、他のプレイヤーに聞いたりして覚えましたか?
 過去に同人誌を編集していて感じたことですが、TRPGの用語は、TRPG全体に通用するものと、特定のジャンル(例えばファンタジーやサイバー世界など)や特定のメーカーの作品で使うものと、特定の一つのゲームシステムでしか使われないものに大別されます。
 このうち、特定のゲームで使用されるだけの用語は、新作ゲームが一つ出るごとに、何十もの言葉が出てくるので、到底把握しようがありませんが、使われるのがそのゲームだけなので、そのゲームを遊ぼうとしないのならば、特に覚える必要はないものです。
 それでは、TRPG全体で使われる用語、すなわちどんなゲームでも使われている用語はどうでしょうか。
例えば、「プレイヤー」と「ゲームマスター」の違いは何でしょうか?
「ヒットポイント」の意味が分かりますか?
一般的な用語は、あまりに常識的すぎて広く使われているため、いざ説明する時に「アレ?何だっけ?」とうまく説明できないこともあるかもしれません。
それだけ溶け込んでいるということなのですが。
 では、一般的なTRPGの用語群が説明されているものが、何か思い浮かぶでしょうか?
出版物でも電子的手段でもですが、現在ではほとんど見受けられません。
せいぜい、ゲームのルールブックに付属している用語集くらいしか見当たらないのです。
 しかも、これは用語集に限りません。
現在手に入る、TRPGの入門者向けの書籍は、ゲーム・フィールドコミックス「RPGなんてこわくない!」のただ一つしかありません。
これには簡単に用語集が載せられています。また、2001年にアトリエサードから出た「TRPGがやりたい!!」にも、見開き2ページの用語集が載せられています(が、その後2003年に出た「TRPGがもっとやりたい!!」では、アイウエオ順の後ろ1/3がバッサリ切られてしまっています)。
 それでは、普遍的なTRPGの用語はどこかに載っているでしょうか?
残念ながら、どこにもありません。
ゲームのルールブックに載っている場合もありますが、これも必要最低限のものなので、一般的な用語であっても、そのゲームで使われないものは載っていないことがよくあります。
「●ー●ー●・●ー●●」「Role&Roll」「RPGamer」といったRPG雑誌にも、用語集は載せられていません。これは一体、どういうことなのでしょうか。
 問題点は用語だけにとどまりません。
現在多数発売されている「リプレイ」にも、RPGの入門者が読むには問題点があります。
元々、ルールブックはそのゲームで遊ぶためのルールが収録されていて、「遊び方」が分かるようになっています。
しかし、実際にどうやってルールを使って遊べばいいのかが書かれているルールブックは多くありません。
D&D3.5eで言えば、ダンジョンマスターズガイドに「プレイの実例」として、実際のゲームの例が少し載せられています。
ところが、リプレイは基本的に、ゲームを遊んだ結果のみを掲載しています。どんなルールをどのように使ったか、例えば敵を攻撃するためにどんな戦闘ルールを使ったか、などについては書かれていません。
リプレイでは、戦闘などのルール的な処理は、読んでいて煩雑で面倒なので、編集で「攻撃します。コロコロ・・・命中!」というように抽象化されてしまいます。
実際どうやったかはルールブックの該当部分を読み合わせてみないと分かりません。
ですから、リプレイだけでは、RPGの遊び方は良く分からないようになっています。
これも、RPG入門者への「壁」の一つです。
 15年以上前に出た「D&Dがよく分かる本」には、(クラシック)D&Dを実際に遊んでいるリプレイが、キャラクターの作成方法から詳細に記述されていました。
ルール上の説明が必要なところには、そこで使われるルールの説明がしっかりと載っています。
こういった、「ルールが分かるリプレイ」こそが、今必要とされているのではないでしょうか?
 「TRPGの入門書」に話を戻すと、1990年代前半には、実に出色のRPG入門書が数多く出ていました。
また、入門者向けにルールを簡易化したシステムもありました。
TRPGの入門人口が急激に増加していたため、そういった入門書もよく出ていたのです。
 しかし現在ではどうでしょう。
一時期の「冬の時代」を脱し、新しいプレイヤーは来続けているのに、それを迎え入れるための「受け皿」が衰退してしまっています。
入門書はほとんどなく、用語を解説したものもなく、多くの場合が入門者に「まずリプレイを読め」という教え方になっています。
しかし、そのリプレイは「読者がルールを知っていることを前提に書かれたもの」だった場合(多くがそうですが)、RPGの入門の助けとならない場合があります。
RPGのプレイ結果だけ読まされても、そこでルールがどう使われたのか分からなければ、ルールを覚える助けにならないのです。
ルールを覚えなくても遊べるRPGというのはありませんから、先にルールブックを読ませて、その後リプレイで感じをつかむというのなら理にかなっています。
ですが、現在のRPGの営業展開では、先にリプレイを出し、その後にルールブックを出すという形がメインになっています。
これではあべこべです。
 そこで私は、過去に多数発売されていたTRPGの入門書が、何かしらの形で再び世に出ないものか、と思っています。
そのまま通用しないにしても、現在の形に直せば、多少の修正で使えると思うのです。
ぜひともご一考頂きたいと思います。

 TRPG入門者への「壁」がもう一つあります。
経験者から入門者への「ノウハウの継承」がうまく行われていないのです。
 特に、2000年以前に遊んでいたプレイヤーと、それ以後からTRPGを遊び始めたプレイヤーでは、ゲームを遊ぶために使う知識や経験が、量はともかく、「質」が変わっているのです。
 これは、その前後に発売されたシステムの「遊び方」が大きく変容したことをも表しています。
 1999年に『日本最後のRPG』という触れ込みで「BEST BIND〜魔獣の絆〜」が発売されましたが、その後にもTRPGの新作が、少しずつですが発売され続けました。
それらの新作には、今までのRPGの遊び方を大きく変える要素が含まれていたのです。
今多くのRPGシステム(といっても一つの会社ですが)で取り入れられている「シーン制」「シーンキャラクター」「レコードシート」などの概念は、1998年の「●ー●ー●◎●● the Revolution」から始まったものです。
このゲームが好評を博したことから、これを製作した会社は同様のシステム概念を盛り込んだ新作を多発し、他のデームデザイナーや出版社にも影響を与えました。
 さて、「シーン制」のRPGシステムが隆盛をもたらしている現在、それ以前のゲームで遊び続けて来たプレイヤーたちは、その影響を受け入れるかどうかで大きく悩み続けています。
ある人は受け入れて、新しいゲームで新しい人と遊ぶようになりました。
またある人は受け入れることが出来ずに、従来の遊び方のゲームを遊び続けています。
 「古い」ゲームで遊び続けて来た人たちは、「シーン制」システムで遊ぶことに少なからず抵抗感があります。
なぜなら、「シーン制」システムは、それまで自分たちが培って来たプレイング・マスターリングの方法を、根底から覆すに近い、全く新しい概念で遊ばれているからです。
つまり、「今までの遊び方が通用しない」のです。
多少の経験はあっても、一から遊び方を覚え直さなければならなかったのです。
しかも、プレイングもマスターリングの方法もちゃんとルールブックに書いてあるのです。
昔のように入門書を読み、先輩方に遊び方を学んだり盗んだりする必要がなくなりました。
そして年を追うにつれ、「シーン制」システムが隆盛してくると、先人たちは自分のやり方が通用しないことに失望もしくは脱力を感じ、コンベンションから足を外し、自分たちのやり方が通用するサークルや、身内だけのキャンペーンに移行していってしまいます。
 もちろん、「シーン制」システムも完璧ではありません。
プレイヤー一人一人にスポットを当てるためのシーン管理や、プレイヤーにきっかけを与える「ハンドアウト」、戦闘のバランス調整が難しい(そして余計かもしれないがルールブックが読みにくい)ことで、ゲームマスターの負担や手数が増加していたり、キャラクターの特技を組み合わせて、効率が良くてダメージ値の高いコンボを組み合わせて披露することが『ロールプレイの向上』と誤解されやすいことなどです。
 一方、「シーン制」システムでは、それまで「パーティー」としてひとまとめにされて来たキャラクターに、一人一人の活躍の場を与えました。
その「シーン」でロールプレイする場が十分にあります。
しかし、ここ2・3年の話ですが、シーンの下でのロールプレイがうまく出来ないというプレイヤーをコンベンションで見かけることがあります。
キャラクターの役割は決まっているのに、ハンドアウトで立ち位置は分かっているのに、自分のシーンになると何をどうしていいのか分からないというプレイヤーです。
しかも、これは入門者に限った話ではなく、プレイ経験が2年3年あるプレイヤーにもこの傾向が見られます。
 ロールプレイがうまいプレイヤーなら、その迷っているプレイヤーに、さりげなく助言をして、キャラクターの行動を引き出すことも出来ます。
本来はゲームマスターがやるべきことなのですが。
しかし、このごろはそうした手を差し伸べるプレイヤーもコンベンションでは減ってきました。
これも、入門者へのノウハウの継承がうまく行っていない例です。

 10年前、15年前のプレイヤーたちは、RPGを遊ぶために様々な環境を整え、それを他のプレイヤーにも共有するようなことが行われていました。
RPGへの知識が盛り上がりを見せ、プレイヤーが急増していた頃です。増え続ける入門者に対し、サークルでは初心者対応マスターを用意し、RPGの入門書も雑誌も豊富で、遊ぶための環境が一通り揃えられた感があります。
 それから現在。
RPGの環境は発展したでしょうか?
一時期と比べてと比べて新作の発表数は増えましたが、入門者に優しい状態にはなっているでしょうか?
ただ単に「入門者にはリプレイを読ませればいい」と考えているだけでは、入門者への間口がどんどん狭まっていくのは必死です。
 それを防ぐには何が出来るでしょうか?
例えば、サークルやコンベンションで、会報やパンフレットにRPGの用語の説明を載せてみたり、RPGの基本的な遊び方の説明を紹介することが出来るでしょう。
入門者に負担の少ないシステムのゲームマスターを用意して、RPGを体験してもらうのもいいでしょう。
 実際に遊んでいる人たちばかりが分かる「入門の壁」を、本当の入門者が乗り越えられるには、単に「遊べば分かる」では不十分です。
壁を乗り越えられるように、例えばスロープを用意してやるのも、RPGのプレイヤーを定着させるために必要だと私は思います。

(Macの練習用に書きためた原稿より)

|

« コミケ落ちました | トップページ | ルールブックを買いました »

コメント

ボクはぐぐってここに何回か来たばかりの、TRPG初心者なのですが、●○◎とかの意味がよくわかりません。
これもTRPGの専門用語なのでしょうか。
初心者に優しい管理人さんに、ぜひ教えてもらえると嬉しいです。

投稿: やっぱりTRPGは難しそう | 2006年11月11日 (土) 23時59分

非常に面白い記事です。

多分、リプレイの想定する読者は、既に「TRPG入門者」ってのを想定していない、リプレイはリプレイだけでお菓子小説のように売れればよい、ルールの売上は別(しかもリプレイの1/10~1/100だし)と考えているのではないかと思います。

リプレイが売れればよい。特にルールブックは売れなくてもよい。入門者勧誘も正直言えばどうでもよい。リプレイを読んで始める、というのはあまり期待していない。リプレイはリプレイとしてのみ売れればよい。

もしかしたら、もしかしたらですが、今の国産TRPGは、「入門者」に対して非常に敷居の高いもの、初期導入金額や仲間を集めるコストが、昔よりも高くなっている、のかもしれません。いやそうでもないか。となると導入コストの低い国産と高い国産に別れている、あとは全体的にリプレイはもう今は完全に昔よりも更に読み物としての売れ行きが求められ、「ルールを学ぶ」というのはあまり期待されなくなっているのではないかと思います。

投稿: 石頭 | 2006年11月12日 (日) 06時45分

以上は出版社側、つまりスポンサー側の考えです。恐らくデザイン側、被雇用者側は別の考えがあると思われます。

ただ、お金をもらう以上、スポンサーの意向には逆らえないのが現状であり、よって「読み物」としてのリプレイが出回っているのだと思われます。

そしてこれはリプレイを出している出版社によってまた戦略は変わり、例えば新紀元社と富士見書房とかでは、まるで異なる、あるいは恐らく編集者の意向によっても千差万別になると思われます。

ただ、全体的に「売れなければ続きが書けない、出ない、編集者自身の進退にも響く」以上、「初心者向けを勧誘するよりも、読み物として売れればよい」という方向性にシフトしているものかと思っています。

投稿: 石頭 | 2006年11月12日 (日) 09時42分

お菓子小説ってなあに?
Wikipediaにもなかった。

投稿: やっぱりTRPGは難しそう | 2006年11月12日 (日) 13時51分

ああすみません、ライトノベルのことを指すMY造語です。「お菓子のように美味しく手軽に、楽しく読めるが、役に立つことはない」という意味で書いています。

投稿: 石頭 | 2006年11月12日 (日) 19時04分

なるほど。娯楽は本質的に無駄ですもんね。テーブルトークもさしずめ、「お菓子RPG」ってところですかね。
教えてくれてありがとうでした!

投稿: やっぱりTRPGは難しそう | 2006年11月12日 (日) 20時57分

確かに最近のリプレイは読み物としての面白さを主軸にすえたものが多いですね。
確かに、ルールを覚えるための教材としては全く役に立たないものが多いと思います。

けれど、初心者にとってルールを覚えることがそれほど重要なことかどうかを、再考してみる必要があると僕は思います。

RPGを遊ぶのはなぜか。RPGを遊ぶために面倒なルールを覚えるのはなぜか。ということを考えると、それはRPGが「面白い」からです。

初心者も同様に「面白」そうと思うからRPGをはじめるのではないでしょうか。

リプレイの主軸が「面白さ」に置かれ、ルールの説明がそのために犠牲になる(紙幅は無限ではない)ことが、初心者の敷居を引き上げていることにはならないと思います。

この間までは、そこで遊び方(ルール)が気になっても、ルールブックが高価で手が出しにくいという状況でしたが、そのあたりはメーカも懸念していたようで、昨今は『アリアンロッド』や『デモンパラサイト』『アルシャードガイア』など低価格のルールブックも発売されていますね。

ところで……『BEST BIND』になっていますよ。

投稿: 黒猫夜 | 2006年11月14日 (火) 20時34分

皆様コメントありがとうございます。
RPGの入門者への障壁が「ルール」「用語」にあることに重点を置いて書いたものですが、「面白さ」という点については書き足りなかったと思います。
私は古いゲーマーですので、「RPGの面白さはルールという基盤の上にある」と思っているのですが、今は逆なのかもしれませんね。
ちなみに・・・魔獣の絆は初版しか遊んだことがありませんので、BEST BINDでいいのです(おい)。

投稿: stealth | 2006年11月14日 (火) 22時03分

こんにちわ。
自分がマスタする卓にTRPG初心者が来たら用語解説をやっております。それ用のシートも準備してたり。

でも実際は説明したらその場で使いこなせるわけでないですね。せいぜいが「タームとして聞き分ける、聞き取る」ことを補助するのが目標です(「向学心」溢れる人が体験後に読み返せるよう、まとめは欲しいですが)。

そのため実はリプレイ文中に単語として繰り返し入ってることにも重大な効果があると思うのですが、いかがでしょう。リプレイだけではカバーできていない、もっと多様な形が必要だ、といった点には同意なんですけどね。

あと、電子的用語集はありますよね。

投稿: アキト@京ぽん | 2006年11月15日 (水) 08時48分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/124829/12643905

この記事へのトラックバック一覧です: 入門者への壁の高さ:

« コミケ落ちました | トップページ | ルールブックを買いました »